今回の記事は「昆虫はすごい」の感想・レビューです。
著者は国内外で評価される昆虫学者の丸山宗利先生。
2015年には情熱大陸に出演され、注目を集めている昆虫学者。
https://mainichi.jp/articles/20151002/org/00m/200/015000c
アジアでは、アリと共生する昆虫の解明の第一人者と評されています。
2018年7月から10月まで開催する国立科学博物館で開催される「昆虫展」の監修をされ、ますます注目の研究者です。
この夏の国立科学博物館の「昆虫」の監修(展示担当)しています。長い期間ですので、機会があれば是非お越しください!https://t.co/3QnXUlnhjl
— 丸山宗利 (@dantyutei) 2018年6月30日
▼話題の昆虫展に関する情報はこちら
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大人になっていつの間にか昆虫が苦手になっていた。
思い出してみると、子どもの頃はよく虫を手づかみしていました。
でも今は少し及び腰です。
みなさんはどうですか?
大人になるにつれ子どものときには出来ていたことができなくなってきました。
言葉を発しない虫たちがなんだか得体のしれないもののように見えてきました。
それは私自身が生物としての成長をとげ、他の種から身をまもるための本能も備わってきたということなのでしょうか。
圧倒的知見に基づく虫の生態解説。
とにかく昆虫はすごい。
すごいとしか言いようがなく、話そうとしていろいろな事象を思い出すと胸が熱くなるほどである。
しかし、さまざまな事象を知れば知るほど、それらを短時間で説明するのは不可能となり、中途半端に小出しにして相手の知識に偏りがを与えることに、いつも煮え切らない気持ちを抱えていた。
昆虫に関する書籍は多いが、読み物として昆虫全般の生物学的な面白さを紹介する本は、最近ではほとんどなかった。
そこで本書では、最近の知見を含め、私が多くの人に知ってもらいたい昆虫に関するよりぬきの面白い話題をかいつまんで紹介した。
(昆虫はすごい (光文社新書)/ページ227)
圧倒的知見に基づく虫の生態解説。
これはある種、歴史小説における司馬史観のような、資料上の人物が立ち上がってくるのと同様の興奮かもしれません。
虫が苦手になってしまった私に対して、虫が如何におもしろいものであるかを教えてくれます。
個別のエピソードで虫がいきいきしてくる。
(略)
植物と昆虫の戦いは、互いが対抗策を出し合い、常に続いている。
植物側の対抗策としてよくあるのは、昆虫が食べた部分に、植物が防御物質を送り込むという方法である。
それに対する昆虫の摂食方法として、防御物質を流し込む葉の管を切断するというやり方がある。
(昆虫はすごい (光文社新書)/ページ36)
虫が植物を食べている。
この何気ないワンシーンにも、虫と植物の攻防があることを本書は描きます。
このような視点の獲得が本書には散りばめられています。
虫たちの視点でみる。植物をみる。他の虫たちをみる。
この立ち位置にいると、次第に虫たちの躍動感にシンクロしてしまいます。
虫の機能に敬意を払う
たいていの生物の形態には何らかの意味がある。
そして近年、「生物模倣」といって、生物の持つ特質を見習い、それを工業製品に活かそうという事業が活発になっている。
たとえば、昆虫の基本的な性質ともいえる巧みな飛翔、泳ぎ、跳躍は、いまだヒトには再現の難しい力学的な精確性に基づいている。
考えてみれば、ヒトの技術をもってしても、いまだハエのように自由自在に飛ぶ小さな装置を作り出すことはできていない。
(昆虫はすごい (光文社新書)/ページ102)
観察者のみぞ知る、虫の「you are OK」な部分を知ることが出来ます。
あとはそこに学びを覚えるかどうか、敬意を払えるかどうか。
身近なところに、まだまだ知られざる技術がある。
それってワクワクしてきませんか?
虫たちに親近感をもってくる。
生物が自分の労力をいかに抑えて利益を得るかと考えたとき、もっとも合理的な方法は寄生である。
寄生性が非常に多くの生物で独立に進化し、そのような生物が今日まで生き延びていることを考えると、寄生という生活様式がいかに適応的な選択肢であるかがわかる。
(中略)
一見均衡を保つ共生関係においても、二つ以上こ個体あるいは社会(あるいは集団)が関係を持てば、必ず双方ができるだけ利益を自分のほうへ多く流れるようにしようと競争する。
その関係において、お互いに滅びない程度に均衡を保っている状態が、一般的に「相利共生」と呼ばれる関係である。
(昆虫はすごい (光文社新書)/ページ172)
もはやこのあたりになってくると、人間の世界における「あるある」ネタではないかと思います。
虫にも、持ちつ持たれつのような、グレーな関係性があることにグッと親近感を覚えてしまいます。
「昆虫はすごい」感想
他のみなさんはどんな感想か、見てみましょう。
[voice icon=”https://ikuken-labo.com/wp-content/uploads/2018/04/men-logo-green.png” name=”” type=”l icon_green”]昆虫をこよなく愛されていることが文面から伝わってきました。
昆虫の生態から人間や他の生物への考察も含まれており示唆に富む内容でした。
学者の方であり、豊富な文献を基にできるだけ正確にそして平易に記述されようとしています。
私自身に大きな知的興奮をもたらしただけではなく、子供に興味をもって貰えそうな話ができそうであります。
参考文献にもNature,Scienceといった一流ジャーナルのものが散見されます。[/voice]
[voice icon=”https://ikuken-labo.com/wp-content/uploads/2018/04/men-logo-orange.png” name=”” type=”l icon_red”]昆虫の世界は非常に奥が深く、私たちが日常見ているの昆虫たちの姿はその入り口に過ぎないことがよく分かった。
その生態は人が考えるどんな設定よりも奇抜で面白い。
時に、可哀想に思えたり、残酷と見える生態もあるが、そもそも虫と人とでは認識のあり方がまったく違うことも思い知らされる。
自然界は残酷なのではなく、私たちの思考や感情を越えて多様で奥深いのだ。
想像もできない昆虫の世界を少し覗くだけで、世界観が変わる。
ひっくり返るというのではないが、あるがままを受け入れる下地としての知見を得た気がする。
世界はかくあるべし、という人の勝手な理想が通用しない昆虫の世界の現実に触れることは、私たちの思考や感情を柔らかにしてくれる。
昆虫は本当にすごい。[/voice]
[voice icon=”https://ikuken-labo.com/wp-content/uploads/2018/04/men-logo-orange.png” name=”” type=”l icon_red”]わたしも、幼いころ、ミジンコに「はまりました」。
どうしてミジンコは、こんなに小さいのに足を目に見えないくらいの速さで動かすことができるのか?と。
でも、丸山著者は、昆虫の「社会的」「文明的」「組織的」生態を調査しているわけで、視野の大きさが違います。
人間が生物の究極の進化だと思っているのは人間だけでしょう。
昆虫に自我意識がないかどうかも、人間さまは、完全に掌握しているか疑問です。
人体の細胞の数よりも多い菌が人間と共生していますから偉そうにはできないと思いますね。
昆虫の世界は、アリですら、すごいのですから、途方もない種類の昆虫が地球を支配しているのだぞ、と昆虫の声が聞こえそうです。
新書なるもの15年ぶり購入しましたが、これは、すごい![/voice]
昆虫の見方がかわる一冊。
知識を得ることで、ものの見方がわかり、世界が広がることがあります。
本書はまさにその絶好例。
虫が生きるミクロな世界の原理原則は、私たちが生きる世界と並列にあることを教えてくれます。
丸山先生の昆虫関連書籍です。
国立科学博物館の「昆虫」展に関する副読本なら、以下もオススメです。
昆虫こわい
昆虫に焦点をあてたのが「昆虫はすごい」とするなら、人に焦点をあてたのが「昆虫こわい」。
丸山先生たちが世界を旅して、昆虫たちを探しにいく冒険譚。
大人たちが昆虫採集に夢中になっている、その熱気が伝わってきます。
きらめく甲虫
虫の美しさ、とりわけ甲虫に絞って、その色鮮やかさをカタログ的に見れるのが、本書。
自然界で生きていくために、その色味に理由があることを知り、また惹かれてしまいます。
宝石のカタログを見ているかのような気持ちになります。
だから昆虫はおもしろい
こちらもカタログ的な要素ですが、扱われている虫の範囲は「きらめく甲虫」よりも広いです。
様相の変化をどう読み解くのか、虫の見方を学べます。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
けん( @ikukenlabo )でした。
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